オースン・スコット・カード「エンダーのゲーム ENDER’S GAME」(ハヤカワ文庫)。

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オースン・スコット・カード
エンダーのゲーム ENDER’S GAME」
(ハヤカワ文庫 上下巻、田中一江訳)

【エンダーのゲーム通常版】

→これはふつうバージョンのカバー。


【エンダーのゲーム イラスト版】

→これは秋赤音さんのイラストバージョンのカバー。

カバーは2種類あるそうだ。


バガーとよばれる地球外生命体の侵攻を、
過去2回にわたって、からくも撃退してきた地球。
第3次戦役に備えて、艦隊を指揮できる司令官を養成するバトルスクールを設立、
優秀な子どもたちが集められて訓練に励んでいる。
6歳の少年アンドルーは、ウィッギン家の3人きょうだいの末っ子。
人口抑制政策で、各家庭に2人までしか子どもが認められない社会にあって、
兄ピーターと姉ヴァレンタインがぬきんでた天才児だったため、
例外的に産まれることを許された「サード Third」だった。
学校ではサードであることでいじめられ、家では兄に虐待されてきた彼だが、
バトルスクールで抜群の成績をおさめて、史上最年少で司令官にのぼりつめ、
やがて人類の運命をにぎる存在へと成長していく。

・・
読み終わって、「やられた。」とおもった。
良かったし、想像していたものと全く違う物語だった。
こんなに深く、人の心にえぐりこむ表現がされているとも思っていなかった。

宇宙の果てまで逃げたとしても、自分自身からだけは逃げられない、ということが描かれており、
また、愛し信じる者がいれば、生きる場所がどこであろうと関係ないことも、描かれていた。

たとえ互いに再起できないほど傷つけあったあとだとしても、
「赦す」ことで争いを終わらせることができる、ということも描かれていた。

いわゆるスペースバトルもの、とかSF、とか簡単にいうには
あまりに深遠なラストで

なにか宮崎駿の「風の谷のナウシカ」(原作のマンガのほう)を彷彿とさせるものもあった。

なぜ、バガーに立ち向かえる可能性をもっているのが「子ども」なのか、

エンダー(アンドルーは、子どもは僕で最後、というつもりでか、
召集以前から「エンダー Ender」と名乗っている。)
を越える能力を持つ大人がいるとすれば、なぜ彼ら自身がバガーと戦わないのか、

エンダーを越える「大人」がいないなら、彼がバガーと戦えるほど力をつけたとしても、
どうしてそれがわかるのか、

頭に浮かんできた、そのあたりの疑問も、読み進めたところ、うまく解決された。

下巻の181ページを読んだときは、
あまりの健気さに、涙ぐんだ。
長いけれど、引用したい。とてもきれいで、哀しい文章だから。

「・・・ そんな思考の連鎖をたどってエンダーが行き着いた先は地球だった。
樹木の生い茂る丘陵に周囲を囲まれた窪地にある、
澄み切った湖の真ん中で過ごした静かな時間へと。
あれが地球だ、とエンダーは思った。
外周何千キロメートルもある球体ではなく、輝く湖をかかえた森、
丘の頂にひっそりと、木々のなかにそびえた一軒の家、
草深い斜面をくだると水辺に至り、水と空の境に住む虫たちを捕食すべく、
魚たちは跳ねあがり、鳥たちは急降下する。
地球とは、コオロギや風や鳥たちが奏でる絶えまない音だ。
そして、はるか彼方の幼年期からエンダーに語りかけてくるひとりの少女の声だ。
そのむかし、エンダーを恐怖から守ってくれたのと同じ声。
それを生かしつづけるためなら彼はなんでもするだろう。
たとえ学校にもどることだって、これからまた四年、四十年、いやたとえ四千年でも、
ふたたび地球を離れることだってしよう。その同じ声のためなら。
たとえ彼女がピーターのほうを愛していようとも。・・」

「一軒の家」は、エンダーが両親に育てられたなつかしい「家」ではない。
エンダーは、バトルスクールに召集されてまもなく、
ウィッギン家が、自分が知らないどこかの地へ引っ越したことを知らされ
帰る家をうしなってしまっている。

「そのむかし」と言っているが、エンダーはまだこの時点で、10歳だ。

エンダーが言っている「恐怖」とは、兄のピーターのことだ。
そして「彼女」とは、姉のヴァレンタインのことだ。

エンダーのこの想いが、
いかに身も心もボロボロで、何もかもを喪った状態にあって
うまれたものであるか、

それは本書を読めば、深く理解できる。

いわゆる「SF」にあまり興味がないわたしでも、感情移入し心から楽しめた小説だった。
今度、実写映画化されるが、このかなり深遠で、哲学的といってもいい心理描写を
どこまでうまく出せることか・・・

うすっぺらな表現で、ガッカリさせないでほしいなあ(^_^)

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