「ヒトラー ~最期の12日間~ Der Untergang (2004)」。

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ヒトラー ~最期の12日間~」
(原題:Der Untergang オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督、2004年、独・伊・オーストリア)

【ヒトラー最期の12日間】


ヒトラーの秘書として働いていた、トラウドル・ユンゲさんの証言をもとに、つくられた映画
1945年4月のベルリン市街戦を背景に、総統地下壕におけるアドルフ・ヒトラーの最期の日々が描かれていた。
主力部隊も各地で連合軍にボコボコにやられており、ドイツの敗戦が決定的になってきた頃だった。
この2年前、スターリングラード攻防戦でくらったダメージが、とにかく壊滅的なもので、
以降ドイツは、どこのエリアのどんな戦闘においても、決定的な勝利をあげられなくなっていた。
(このまえ「スターリングラード」を観たせいか、そりゃそうだろうなと深く納得。)
だんだんとおかしくなっていくヒトラーの姿、
独国防軍の軍人や、ナチス親衛隊員たちそれぞれがむかえた結末、
宣伝相ゲッベルスの家族たちの悲劇、
戦火に巻き込まれたベルリンの人々の姿も描かれていた。

歴史に対して誠実というか 
ねじまげているようなところや、ドラマチックにしようと無理しているところが、なかったのが良かった。

ヒトラーがみごとだった。2週間にも満たない日々を追う物語なのに
日を追うごとに5歳ぶんくらい老け込んでいくように見えたし、 
顔色も悪くなっていくし、言うことはめちゃくちゃだし なんだか身震いがきたくらいリアルだった。
女性と子ども、動物に対して、やさしく紳士的な態度をくずさなかった姿が印象的だった。
ようするに孤独で えらくふつうのおじちゃんだった。彼がヒトラーであったということ以外は。
むしろよくあれほどまでに 精神的にまともに近い状態を保っていられたものだと、思わなくもなかった。
ふつうならもっと見苦しく、もっと壊れて、発狂するんじゃないかな。
わたしだったら、もたないなあ。

外国の人は やっぱり顔がみんな似ているように見えるし 登場人物が多いので
区別がつかなくてたいへんだったが
ゲッベルスだけはなぜか「これゲッベルスだな」とすぐわかった。
イメージぴったり!!!瓜二つとまではいわないがイメージがぴったり!!
ヒトラーが彼の名を呼ぶより前に「ゲッベルスだな」とわかったのには驚いた。
よくこんなハマる人見つけてきたもんだな。

ゲッベルス夫人は考えてみれば気の毒な人だと思った。
彼女は我が子にたいする愛情と
どうしても曲げることのできない自分のイデオロギーの間で苦しんでいた。

つまり
彼女は母親としてほんとに子どもたちのことを愛していたのだが
ヒトラーのいない世界、ナチスの正義が成り立たない世界では 
子どもたちが生きる意味もないと信じていたのだ。
だからナチスドイツが敗北するなら 子どもたちは死ななくてはいけなかった。
母として、子どもたちを殺したくなんて、もちろんなかったのだが
母として、ヒトラーへの忠誠を捨てることもどうしてもどうしてもできなかったのだ。

結果、ゲッベルス夫妻は おさない子どもたち6人を毒殺し、
自分たちも、(映画では)服毒した上で銃口をおたがいに向け、自殺した(とされている。)のだが。

子どもたちの命を奪うなんて、絶対にやってはいけないことだが、
それを彼女たちに言うのもなんだか筋違いだ。
ゲッベルス夫人は、ナチスなき世界に子どもたちの未来はないと思っていたので。
それはどうしても変えられなかった、考え方だったので。
エヴァ・ブラウンと自殺することを決めたヒトラーの、自室におしかけてその膝にすがり、
自殺をおもいとどまってほしい、あなたがいなかったら私たちはどうしたらいいのかと
泣き騒ぐ夫人に、胸が痛んだ。
彼女は子どもを殺したくなんかなかったのだとおもう、映画を観ていた限りではそう感じた。
何がなければ子どもは死ぬしかないとか 未来は誰それがいなければ成り立たないとか
そんなものの考え方しかできなくなってしまった、彼女が気の毒だった。
いったいなにが彼女をそういうところに追い詰めてしまったのか、
それはヒトラーである、とは一概にいえないとわたしは思った。


全体的に、映像がピシッときれいすぎて、臨場感?に欠けるような気はすこしした。
におい、気温、体温といったものがあまり感じられなかった。

また、さいしょの、トラウドルのモノローグらしきところで、トラウドルが
「わたしはナチスに(政治に?)とくに興味があったわけではなかったし非ナチ党員だった」
「(ナチスのしていたことを)よく知らなかった」
と言っていたのに対しては、「ほんとにそうかなあ?」と思った。
ドイツ人ならナチス党支持グループへの参加を強く勧誘されたはずだし、
それを拒むのは難しかったはずだ。なんの権力のうしろだてもない、一般市民では。
そして当時、ドイツで権力といったらそれはナチスのことだったではないか。
疑り深くなってきていた晩年のヒトラーが、よく知りもしない、しかも非ナチス党員の人を
秘書に雇ったりしただろうか??
公募をかけたことは考えにくいし、たぶん縁故採用だったろう。
だとすれば相当な筋金入りのナチス信奉者が(いっそ親衛隊員?)、身近にいたってことだし
彼女が「知らない」でいられたと考える方が、不自然ではないか。
そりゃ、人の心まで支配することは誰にもできないので、面従腹背であったかもしれないが・・・
そのわりに、ヒトラーや側近がすすめても彼女は最後の最後まで地下壕にとどまったし・・


ここのところ なんとなく、戦争映画ばかり観ていて 
内容が内容なだけに 観るたびにすごく気分が落ち込んで
「いったいわたしは何をやっているんだ・・」と我ながら思いもするのだけれど、

おもしろかったとおもう映画が多い。
観なきゃよかったとは思わない。
たとえ題材が「戦争」という、へヴィーで評価しにくいものであっても 
映画としてはやっぱり、「つまらんものはつまらん」ときもあるので 
おもしろかったと、これだけ思えるのはラッキーだと思う。

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